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2013 World Championships感想(6)

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4.   Kanako MURAKAMI   (JPN)   189.73
SP: TES 36.87 + PCS 29.77 = TSS 66.643位)
FS: TES 60.98 + PCS 62.11 = TSS 123.097位)
 
今季は年末の全日本選手から調子を上げ、年明けのStars on Iceで生で観た時も、ジャンプの切れが良く絶好調といった感じだった。今回の世界選手権でもSPでは完璧な演技で3位に着けたが、FSではTESが思ったよりも伸びずに7位に後退し、総合では4位とあと僅かの差で表彰台を逃した。もしSPで浅田選手の3Aの両足着氷が正しく減点されてFSの最終グループに残れなかったら、銅メダルを獲得していたのは浅田選手ではなく村上選手だったかもしれない。
 
村上選手がFSTESを伸ばせなかった大きな理由は苦手な2A1Aになってしまったこと(3F+seq+2Aは常に鬼門だったが、昨季の鈴木選手の後半の3Lzの様に、ついに最後まで克服することができなかった)と、やはり苦手とする二つの3Loで回転不足を取られたことだった。
 
 
日本の女子選手には、高難度のジャンプや基礎点の高いジャンプ構成には挑戦する一方で、6種類のジャンプの中で得手不得手の差が大きかったり、とにかく跳べればいいとばかりジュニア時代に変な癖をつけたままシニアに上がり、結果としてGOEを伸ばせず苦労する選手が多いような気がするのは私だけだろうか。
 
特に記憶に残っているのは中野友加里選手で、果敢に3Aに挑戦する一方で、3Lz3F3Loにおけるフリーレッグの過度の巻足のおかげで、6種類全部のジャンプでGOEを伸ばせなかった。彼女の巻足は、現在の村上選手のコーチである山田満智子氏に師事している間に身に付けたと言われており、その後コーチを変えても治すことができなかった。
 
浅田選手も山田氏に指示していた時期にがあり、当時の彼女の技術にもかなり偏りがあった。その後アメリカでRafael Arutunian氏に師事して一時的に技術はかなり改善されたが、二人の指定関係は長く続かなかった。Tatiana Tarasova氏に師事していた時期はジャンプコーチを付けず、自己流で成長期の体型変化に対応しようとして、結果としてフォームを歪めてしまった。バンクーバー・オリンピックのシーズンにはGPFにも進めない状態だったのを、その後の全日本選手権から世界選手権までなんとか乗り越えられるよう応急処置を施したのは、長久保コーチだったと聞く。その後佐藤コーチが彼女のメイン・コーチになっているが、ジャンプ技術はあくまで修正に留まり、根本的な矯正は行わなかったようだ。
 
昨年末の全日本選手権ではジュニアの宮原智子選手が、不調だった鈴木選手を抑えて3位に入り、日本のメディアはジュニア世界選手権のメダル候補と囃し立てていたが、海外の反応はもっと冷ややかだった。彼女は体の軽さに頼ってジャンプを跳んでいて、助走のスピードもなく、高さも飛距離もなく滞空時間も非常に短い。全日本では回転不足の判定が甘かっただけで、その前のJGPSではかなり回転不足を取られていた。「厳しいテクニカル・パネルに当たったら宮原のジャンプは全滅だろう」とは、海外の掲示板でも既に言われていた。更に短い滞空時間を補うために、3F3Lzでは右足にブレードを全面近く使って180度近く氷上で回ってから蹴り上がっているという指摘もあった。(だから本来は左足に重心を残して進行方向に背を向けて踏切らなければならない3Lzにおいて、彼女は厳密に言えば最終的に右足だけでしかも前向きに踏み切っていることになる。)海外では宮原選手をジュニア世界選手権のメダル候補に上げている人はほとんどいなかったし、身体がとても小さい現在でさえ回転が危ういのだから、このままの跳び方をしていたら、背が伸び始めた途端に彼女はまともなトリプルを跳べなくなるだろうと多くの人が考えていた。
 
私自身は宮原選手のコーチ達のジャンプ技術をどう考えているのかが疑問だった。これから成長期に入ることを見越して、今から彼女のジャンプフォームを根底から大改造する気はないのかと。まさか彼女が永遠に小さい子供の身体でいるとは思ってはいないだろう。しかし、来季はシニアに上がってソチ五輪を目指す意向が報道されるのを見る限り、彼女のジャンプ技術を根本的に矯正する予定は、少なくともソチの前にはないと思われた。一度フォームの大改造を始めたら一シーズンを棒に振るくらいの覚悟が必要だからだ。なんとか騙し騙しソチまで持っていこうとしているのだろうかと思った。ただしこの作戦は宮原選手の体型変化が始まった時に崩壊するだろうし、それがいつ起こるかは誰にもわからない。
 
2月に開催されたジュニア世界選手権で、宮原選手はまさに「厳しいテクニカル・パネルに当たってジャンプは全滅」の状態に近かった。SPFSを合わせて回転を認定されたトリプルはわずか一つで、総合で7位に終わった。
 
ジュニア世界選手権の結果とプロトコル
 
これは、宮原選手のジャンプ技術には根本的な問題があるから若い今のうちに徹底的な改善を図れという、テクニカル・パネルからのメッセージと取れないこともなかった。しかし、宮原選手のコーチの一人である田村岳斗氏の反応は、自身のブログでのテクニカル・パネルに対する批判だった。
 
ROAD TO 2014 田村岳斗 -華麗なる舞
 
田村氏のこのブログを読んだ時、では彼は宮原選手の現在の技術に問題はないと思っているのか?と、正直驚いた。宮原選手のコーチ達はここから彼女をどう育てていこうとしているのだろう?目の前のゴールのために、選手の長期的な競技キャリアを犠牲にすることがなければいいのだが。(ちなみに田村氏の現役時代のコーチは長久保裕氏である。)
 
 
5.  Ashley WAGNER   (USA)   187.34  
SP: TES 33.06 + PCS 30.92 = TSS 63.985位)
FS: TES 61.34 + PCS 63.02 – 1.00 = TSS 123.366位)
 
全米選手権優勝にケチがついて多少気分が腐ったりもしていたWagner選手だが、SPではまずまずの滑り出しだった。しかしFSでは今季初めて2A+3Tに挑戦したものの3Tが回転不足になり、更にステップ・シークエンスの真ん中で転倒し、大きくTESを失った。絶好調の前半とは対照的に、今季の後半は今一つ盛り上がりきれないまま終わってしまった印象だ。
 
 
6.   Gracie GOLD   (USA)   184.25  
SP: TES 30.20 + PCS 28.62 = TSS 58.859位)
FS: TES 65.22 + PCS 60.18 = TSS 125.405位)
 
今回シニア世界選手権初出場のGold選手はSPでは出遅れたが、FSでは会心の演技で5位、総合では6位にまで躍進した。
 
アメリカ女子は5位のWagner選手と6位のGold選手で合計が13よりも小さくなるので、来季の枠を3つに増やすことができた。米スケート連盟も胸を撫で下ろしたことだろう。
 
 
7.   Zijun LI   (CHN)   183.85  
SP: TES 30.76 + PCS 26.55 – 1.00 = TSS 56.3112位)
FS: TES 69.41 + PCS 58.13 = TSS 127.544位)
 
今回優勝したキム選手の次に素晴らしい演技で会場を大いに沸かせたのが李選手だと思った。SPでは3T+3Tで回転不足を取られて出遅れたが、FSでは安定した技術と愛らしい演技で観客を魅了し、全てのジャンプをほぼ完璧に決めて(唯一のエラーは3Lzのエッジ)9点近いGOEを稼ぎ、70点近いTESを叩き出した。正確で安定したジャンプ技術は若い頃のキム選手を思い起こさせたが、彼女の演技からは現在のキム選手にはない明るい朗らかさを感じた。今季がシニアデビューだったためPCSはかなり抑えられたが、来季演技に相応しいPCSが出るようになれば、ソチ五輪や世界選手権のメダルも夢ではなくなるだろう。

(つづく。)

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