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2013 World Team Trophy 感想(2)

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【無良崇人 男子シングル5位】
 
今季大躍進を遂げ、四大陸選手権(4CC)、世界選手権、そしてこのWTTと、大舞台でもすっかりお馴染みになった無良選手。彼の豪快なジャンプは生で見るとより一層迫力があった。見事に決まったSP3Aは、テレビでは伝わりにくいが現場で観ていると着氷で「どすん」と鈍い大きな音がして、これぞ男子のジャンプという感じだった。
 
FSの「Shogun」は骨太で男臭い演技をする彼によく似合ったプログラムで、振付師のTom Dickson氏は良い仕事をしたなあと思った。彼は昨季のFSDickson氏だったが、来季もDickson氏と組むのだろうか。
 
ただ、FSを観ながら「お願い、二本目の3A1Tでもいいからなにか付けて」とか「お願いだからどこかで3つ目のコンボ入れて」と思わずにはいられなかったのも事実だ。もし3A1Tでもいいからつけて、最後の三本のジャンプのうちの一つに2Tを付けることができていたら、Max Aaron選手とKevin Reynolds選手を抜いて3位に入ることができていたかもしれない。群雄が割拠する戦国時代状態の日本男子の中にあって、この辺りをきっちり詰めることができるか否かで、来季の結果が大きく明暗を分けることにならないとも限らない。
 
しかしテレビ朝日が無良選手の存在をほとんど無視していたのには本当に呆れた。チームにおける貢献度なら彼も浅田選手も同じ5位(8ポイント)なのに、だ。
 
 
【鈴木明子 女子シングル1位】
 
redemption(名詞)  
1 買い[取り]戻し;(約束の)履行.
2 救助, 救出.
3 (犯罪に対する)償い, あがない;あがなうもの, 取り柄
4 《神学》(キリストの犠牲による)罪のあがない, 贖罪(しょくざい), 救い.
5 (抵当などの)弁済, 償還;(貨幣の)兌換(だかん).
 
WTTの鈴木選手の演技はまさに「redemption(失ったものを取り戻すこと)」だった。
 
私自身は鈴木選手のWTT出場には複雑な心境だった。今季は兎に角好調不調の波が激しすぎた。4CCFSの自己ベストを更新したかと思えば、世界選手権ではミスを連発してその後回復できずに沈んでしまった。WTTで、4CCと世界選手権のどちらの彼女が現れるのかは、予想するのが難しかった。もし世界選手権の様な結果になってしまったら更なる自信喪失に繋がるだろうし、もし4CCだったら「なぜ一ヶ月前に同じような演技ができなかったのか」と悔やむことになるだろう。もちろん前者よりは後者の方がずっと望ましいのだが。なんとか180点くらいにまとめてくれればいいくらいに思っていたのだが、実際は200点近い自己ベストを叩き出しての女子シングル圧勝だった。
 
とにかくSPFSもスピードが半端なく、時々そのスピードのコントロールに手こずっていたほどだった。SPでは、冒頭に3T+3Tを予定していたのだがスピードが出すぎてコントロールが危うくなり、3T+2Tに変更して乗り切った。ただ、ジャンプのレベルを下げたのが気にならなかったほど、演技全体にキレと勢いがあった。3T+2T/3F/2Aというジャンプ構成で66点代とは点数が少し高過ぎるようにも思えたが、プロトコルを見るとジャンプではしっかり基礎点を失っているかわりに、スピンとステップでは全てレベル4を獲得して、ジャンプの失点の埋め合わせをしていた。FSでは冒頭の3F+2T+2Lo2A+3Tは綺麗に決めたもの、その後は着氷でヒヤッとするジャンプが多かった。回転不足を1つか2つ取られるのではないかと心配したが、133点代という高得点を聞いた時、7つすべてのトリプルの回転が認定されたと確信した。帰宅してテレビで演技を見たら、回転不足どころかほとんどのジャンプでむしろ少し回り過ぎていて、着氷が乱れたのもそのためだった。着氷が危うかったジャンプではしっかり減点されていた一方で、スピンとステップでは全てレベル4を獲得していたし、ステップ・シークエンスとコレオ・シークエンスでは高い加点がついていた。
 
今回の高得点の一番の大きな理由はPCSだ。SP32点台、FSでは67点台で、いずれも浅田選手よりも高かった。これまでどれだけ鈴木選手が良い演技をしてどれだけ浅田選手が失敗を重ねても、鈴木選手のPCSが浅田選手を上回ることはなかったので(2011NHK杯のSPが唯一の例外だろうか)、これはちょっとした事件だった。これまでずっと鈴木選手のPCSが低すぎると不満をこぼしていた海外のファンも、今回やっとその演技に相応しい得点が出たと喜んだ。
 
去年のNHK杯のFSWTT程度のPCSを出して素直に鈴木選手を優勝させれば良かったのにとも思うが、もしかしたらNHK杯の結果に対する声高な批判に応える意味で(あるいは批判をかわすために)、今回ISUジャッジは鈴木選手に妥当なPCSを出したのかもしれない。ならばISUにとってもこのWTTは「redemption(贖い)」だったと言うことか。
 
OFSは本当に難しいプログラムだった。今まで誰からも語られたことのない全くオリジナルな物語を、身体の動きだけでジャッジと観客に伝えなくてはならない。クリーンに近い演技をすれば観る者に魔法をかけて別世界へと誘うことさえできる一方で、ミスが続けば小鳥のような軽やかな繊細さも、弱さ、自信の無さとして観る者の目に映っただろう。今季最後のWTTで、鈴木選手は今一度ジャッジと観客に魔法をかけることができた。キス&クライにカナダチームが乱入したのが微笑ましかった。
 
芸術性において「O」は他のプログラムとは一線を画していた。このプログラムを来季の五輪シーズンに持ち越してほしいという声は多かったが、今回のWTTを完成形として、「O」は競技プログラムとしてのその役目を終えたようだ。鈴木選手は既に来季のFSPasquale Camerlengo氏に依頼していると言う。「O」でアーティストとしての新境地を開いた彼女だが、来季はどんなプログラムを見せてくれるだろうか。今季のジェットコースターの様な経験を、彼女は来季にどう生かすことができるだろうか。
 
 
【浅田真央 女子シングル5位】
 
佐藤信夫コーチの談話では世界選手権の後モチベーションが下がってあまり滑り込んでいないということだったが、体重が増えたのは見てわかったし、動きのキレも今ひとつで、FSの白い衣裳がきつそうだった。3A2A+3Tの調子が上がらなかったのは仕方ないとしても、SPFS合わせて三本跳んだ3Fのうち二本が回転不足になったのはまずいなあと思った。今季を通して3Fの成功率は50%くらいだろうか?FSではずっと不安げな表情で滑っていて、後半にはスタミナ切れを起こして本当に辛そうだった。ステップ・シークエンスとコレオ・シークエンスの頃にはスケートもあまり滑らくなっていて、リンクの端まで辿り着けなかったし、最後はちょっとふらふらしていたように見えた。実際どれくらい体重が増えたのかはわからないし、元が細い人なのでわずかな体重の増加でも大きく影響するのかもしれないが、わずか一ヶ月でこれほどスタミナがなくなるかと、ちょっと驚いた。
 
テレビ朝日としては浅田選手中心に盛大に盛り上げる予定だったのだろうが、他ならぬ彼女自身の不調により、WTT関連の報道も去年に比べると尻すぼみに終わってしまった気がする。その代りと言ってはなんだが、女子フリー終了後のインタビューで浅田選手が来季をもって引退の意向を口にしたことから、テレビ朝日もWTT関連を早々に打ち切ってそちらの方に飛びついたという印象を受けた。
 
 
(日本人以外の選手に続く。)

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