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Channel: Mikekoの徒然ブログ
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2013 World Team Trophy 感想(3)

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【一番ショックだったこと】
 
言うまでもなく、Konstantin Menshov選手のFS途中棄権。
 
今季国際試合でロシア男子の中でもっとも安定した結果を残し、ロシア選手権で3位に入りながら、若手のMaxim Kovtun選手を優遇する露スケート連盟の方針により、世界選手権はおろか欧州選手権にも派遣されなかったMenshov選手は、このWTTへの参加を切望していたという。ことの経緯を知っていた日本のファンは彼を暖かい拍手で迎えたし、SPは完璧な演技で自己ベストを更新した。だから、FSで冒頭の4Tを見事に決めて、これは良い滑り出しだと思った直後、3Aで転倒して右肩を強く氷に打付けて脱臼し、結局棄権せざる得なくなった時は、私自身全身の血の気が引いた。(あまりのショックのためか、次の滑走者である高橋選手がウォームアップ中に転倒したことも覚えていない。)不遇にめげずこれだけ頑張っている彼に対して、運命はなんて残酷なのだろうと思った。
 
Menshov選手の退場後呆然と立ち尽くすロシアチームの姿が痛々しかった。特にペアのMaxim Trankov選手。露スケート連盟がMenshov選手ではなくロシア選手権5位のMaxim Kovtun選手を欧州選手権に派遣すると決定した時、彼は真正面からそれに反対した。ペアのTatiana Volosozhar & Maxim Trankov組は今季事実上敵なし状態で、ロシア選手の中でソチ五輪でのメダル、それも金メダルが確実視されている唯一の選手であるため、Trankov選手は連盟に対し比較的強く出られる立場にあるのかもしれない。それでも強権的な連盟の決定に選手が真正面から異議を唱えることは、異例中の異例だった。
 
Russian figure skaters revolt againstnational team's coaches
"The coaching council is garbage!!! All the athletes stand by Menshov. Without exception!" Maksim Trankov, newlycrowned Russian pairs champion with Tatyana Volosozhar, wrote on his Twitter page.
 
選手達はおろかNikolai Morozov氏をはじめとしたコーチ陣からも、欧州選手権にはKovtun選手ではなくMenshov選手を派遣するべきだという意見が上がったが、結局その声は連盟の力によって捩じ伏せられた。Kovtun選手のコーチであるTatiana Tarasova氏の権力の大きさを、改めて知らしめたという感があった。
 
それだけに、Menshov選手のWTT派遣を誰よりも喜んだのはTrankov選手だったかもしれない。SPを会心の出来で終えてキス&クライに戻ってきたMenshov選手を、お姫様抱っこで迎えたTrankov選手は本当に誇らしげで嬉しそうだった。Menshov選手の途中棄権を誰よりに残念に思ったのもTrankov選手だったかもしれない。
 
翌日大会3日目、ロシアチーム応援席で元気そうに仲間に声援を送っていたMenshov選手を見て、心からほっとした。彼は3年前にも同様の怪我をしているらしい。これが癖にならないといいのだが。(癖になったら手術が必要になる。先進国では大した手術ではないだろうが、ロシアの医療事情は今一つ不安なものがある。)来季は五輪も世界選手権もロシアは1枠しか持っていないので、彼が出場できるチャンスは限りなくゼロに近い。30歳という年齢からして、来季が彼の最後のシーズンになるだろう。せめて自身が納得できる形で現役を終えることができることを祈るばかりだ。
 
 
今回のMenshov選手の怪我と棄権で、フィギュア・スケートが如何に危険なスポーツであるかということと、ソチ五輪で団体戦を行うことのリスクも見えてきた。個人戦の前に団体戦に参加することは選手にとって負担になることは事実である一方で、個人戦の前に本番のリンクで滑るチャンスと捉えることもできるだろう。しかし今回のMenshov選手の怪我で、団体戦で怪我をして個人戦に出場できなくなる可能性も皆無ではないということを思い知らされた。
 
団体戦に出場する国、特に選手層の厚い国は、団体戦にどの選手を選ぶか難しい決断を迫られることになるかもしれない。日本の場合だが、おそらく羽生結弦選手と浅田選手は団体戦には参加しないと思われる。羽生選手はISUランキングからすれば、昨年も今年も出場するべきであったところを、いずれも怪我を理由に辞退している。怪我が多く、喘息の持病持ちで繊細な体質であると言われる彼を、日本スケート連盟(JSF)はソチのメダル候補としてかなり大切にしているようだ。浅田選手はぎりぎりまで日本で調整し、試合直前に現地入りする傾向がある。今年の世界選手権も日本選手の中で一番現地入りが遅かった。バンクーバー五輪の時は、早く現地に入って調整するように勧める当時のコーチTatiana Tarasova氏に従わず、1週間前まで日本で調整していた。その彼女が団体戦のために個人戦の何週間も前にソチ入りするとは考え難い。浅田選手が団体戦に出場したくないと言えば、JSFも彼女の意思を尊重するだろう。


(まだ続く。)

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